日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
症例報告
乳児期早期に二期的再建を行った右肺動脈近位部欠損症の1治験例
八神 啓村山 弘臣長谷川 広樹前田 正信
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 43 巻 5 号 p. 300-304

詳細
抄録

症例は,在胎40週0日,出生時体重3,591 g,児頭骨盤不均衡のため予定帝王切開にて出生した男児.日齢1に連続性雑音のため当院に搬送された.入院時の心臓超音波検査で,主肺動脈から右に分岐する肺動脈分枝を認めない一方,上行大動脈から右肺に向かう血流を確認し,右肺動脈大動脈起始と診断した.当初よりこの血流は細かったが,日齢3に自然消失し,片側肺動脈欠損に診断を修正した.この症例に対し,日齢8に腕頭動脈から右肺門部肺動脈に,PTFE人工血管3 mmを用いて,体動脈-肺動脈短絡手術を行った.その後,右肺動脈の成長を待って,日齢48に主肺動脈-右肺動脈間にPTFE人工血管8 mmを間置することで,解剖学的に根治した.術後経過は良好であった.片側肺動脈欠損は非常に稀な疾患で,幼少期は無症状なことが多く,早期に診断されることは少ない.そのため,診断されたときにはすでに患側肺の委縮,低形成が進行しており,しばしば血行再建が困難なことがあると言われている.今回われわれは,片側肺動脈欠損に対して,新生児期から乳児期早期に二期的根治を施行し,良好な結果を得たので報告する.

著者関連情報
© 2014 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事
feedback
Top