日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
原著
リスク分類別大動脈弁狭窄症に対する大動脈弁置換術の妥当性
大徳 和之服部 薫福田 和歌子近藤 慎浩谷口 哲皆川 正仁福井 康三鈴木 保之福田 幾夫板谷 博幸
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 43 巻 2 号 p. 43-48

詳細
抄録

〔目的〕大動脈弁狭窄症(AS)に対する大動脈弁置換術(AVR)についてJAPAN score(JS)よりリスク分類を行い,急性期・中期成績から人工心肺使用下AVRの妥当性を検討するとともに,経カテーテル的大動脈弁埋め込み術(TAVR)適応について検討した.〔対象と方法〕対象は過去10年間に施行したASに対するAVR症例123例のうち,追跡調査可能であった116例を後方視的に検討した.平均観察期間は7.6±0.3年.JAPAN scoreを用いて5%未満をlow risk(LR)群79例(2.6±1.1%),5%以上10%未満をmoderate risk(MR)群30例(6.8±1.4%),10%以上をhigh risk(HR)群7例(23.3±16.8%)に分けて検討した.〔結果〕術前合併症については各群で有意差なし.HR群で大動脈弁口面積が有意に小さく,左室駆出率(EF)では有意に低かった.術中因子ではHR群で手術時間,体外循環時間が長くなった.在院死亡はLR群1例,HR群1例で原因は術後低心拍出症候群であった.5年生存率は78%(LR群77%,MR群82%,HR群71%)であった.死亡原因として癌6例が最も多く,術前担癌状態であった4例(LR群1例,MR群2例,HR群1例)は術後早期に癌死した.5年心血管イベント(MACCE)回避率は全体で85%(LR群83%,MR群90%,HR群85%),5年MACCE関連死亡回避率は93%であった.〔結語〕ASに対する人工心肺使用下AVRはJAPAN scoreにかかわらず急性期・中期成績は良好であった.担癌患者は術後早期に癌死していたが,TAVRの適応かどうかは更なる検討が必要である.

著者関連情報
© 2014 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top