2014 年 43 巻 2 号 p. 80-83
症例は62歳女性.幼少期より胸部X線異常影を指摘されていたが精査を受けたことはなかった.妊娠出産も特に問題なく経過した.健診を契機に精査をすすめられ当院を受診し,心エコー,MRI,心臓カテーテル検査で内臓逆位,修正大血管転位(cTGA),高度三尖弁閉鎖不全症(体循環房室弁閉鎖不全症)と診断された.解剖学的右室駆出率40~50%と心機能は軽度低下しており,待機的に三尖弁置換術の方針となった.術者が患者の左側に立って手術を行った.上行大動脈の右方偏位が高度であったため大腿動脈送血とし,上下大静脈脱血で体外循環を確立した.三尖弁は背側に向かって開口しており上方中隔アプローチでようやく視野が得られる程度であった.各弁尖を温存し三尖弁置換術(SJM弁27 mm)を施行し得た.経過は良好で術後1年の心エコー検査で心機能は保たれていた.cTGAではその解剖学的特徴から体循環右室機能低下や三尖弁逆流が問題となることが多い.弁置換後も右室機能低下は進行する場合があり,注意深い経過観察が必要である.