日本森林学会誌
Online ISSN : 1882-398X
Print ISSN : 1349-8509
ISSN-L : 1349-8509
論文
吸収源CDM政策の形成過程
−レジームとしての特性に着目して−
福嶋 崇
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 95 巻 3 号 p. 147-155

詳細
抄録

本論文は, 途上国での植林を通じたGHG削減政策である吸収源CDMレジームの形成過程について分析することを目的とした。吸収源CDMレジームの形成過程では, 吸収源のGHG削減策としての活用の是非を含め様々な点で各国の意見の対立が大きく, GHG吸収における不確実性の高さや非永続性, 途上国にとって優先順位の高い排出源CDMへの投資額の減少に対する懸念, といった理由からEUや中国, ブラジルなど多くの国が吸収源CDMの導入に反対した。また, レジームの形成要因として「利益」, 「力」, 「知識」の観点から分析した結果, 三つの要因はいずれも吸収源CDMのレジームとしての有用性を低減させ, また政策の推進を阻む方向に作用していたことを明らかにした。さらに, 吸収源CDMは専門性や複雑性の高さもあり, 交渉の優先順位も低く, このことは結果として事業の登録の遅れを招いていた。以上のレジーム形成過程の分析から, 「現行ルールにおける吸収源CDM推進の限界」の背景が明らかになった。吸収源CDMの推進のためには, 厳格な要件の緩和や複雑なルールの簡易化などが求められる。

著者関連情報
© 2013 一般社団法人 日本森林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top