2014 年 47 巻 6 号 p. 313-320
症例は40歳の男性で,全身倦怠感と腹部膨満を主訴に前医を受診した.CTにて下大静脈(inferior vena cava;以下,IVCと略記)と右房内に進展する腫瘍栓を伴うS7中心の肝細胞癌と診断された.入院時,肝静脈灌流障害による肝機能障害と腹水貯留を認め,直ちに肝動脈注入化学療法(5-FU+CDDP)を開始した.2クール後,CTにて原発巣と腫瘍栓の縮小を認め,肝機能障害の軽快を確認後,肝右葉切除・IVC腫瘍栓摘出術を施行しえた.術後経過は良好で,術後18日目よりソラフェニブ内服を6か月継続し術後27か月無再発生存中である.周術期の補助療法と外科切除の集学的治療が奏効し,長期生存の得られた1例を経験した.