2014 年 47 巻 10 号 p. 644-650
症例は虫垂炎にて開腹歴のある73歳の女性で,受診約5時間前より特に誘引なく突然の右下腹部痛を主訴に近医を受診し,結腸憩室炎の疑いで当院紹介となった.理学所見上,右下腹部に手拳大の腫瘤が触知され,同部に強い圧痛を認めた.造影CTでは上行結腸外側に著明に拡張し緊満した小腸ループを認めた.我々は内ヘルニアに伴う絞扼性小腸イレウスを疑い緊急開腹術を施行した.術中所見では回腸が約30 cm右傍結腸溝の腹膜窩に嵌入しており,文献上傍上行結腸窩ヘルニアと分類される.傍上行結腸窩ヘルニアは非常にまれであり,文献上のデータと若干の考察を加えてこれを報告する.