産業動物臨床医学雑誌
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原著
尿石症が多発した黒毛和種牛肥育農場における発生要因と飼料変更による予防対策の検証
渡辺 大作辻村 歩美富岡 美千子福田 恭秀川島 秀平小森田 真悟遠藤 健太郎高岸 聖彦
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2013 年 4 巻 4 号 p. 143-153

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抄録

黒毛和種牛の肥育農場(A)で2010年11月〜2012年2月にかけて尿石症が多発した.その原因究明のため,尿石症が多発したA農場の飼料変更前に採材した群をA変更前群とし,発生が低い2農場(B群,C群)と比較し,また発症予防のため飼料変更(Ca添加減少,陰イオン製剤添加)した後の牛群をA変更後群として比較検討した.3カ月間隔で検診を実施し,血液および尿検査,給与飼料,枝肉成績並びにと畜場における膀胱内結石の有無を調査した.その結果,給与飼料のCa/PはA変更前群では1.2〜1.3,BおよびC群は0.6〜0.7で,15カ月齢以降のCa給与量はA変更前群では45〜53g/日とBおよびC群の約170%,P給与量は36〜42gとBおよびC群の約70%であった.A変更前群の尿pHはBおよびC群に比較し平均8.1〜8.3と有意に高く,血清Ca濃度は有意な高値または高い傾向,尿中Mg排泄率は有意な高値,尿中P濃度と尿中P排泄率は有意な低値を示した.尿石症牛の膀胱内結石の主成分はストラバイトで,ケイ酸塩(CaSi, MgSi)が少量含まれていた.A変更後群では尿pHは低下し,尿石症の発生はなくなり,膀胱内結石保有率は減少した.今回の事例は,BおよびC農場配合飼料に比較して高いCa含量のA農場変更前配合飼料に起因して尿pHがアルカリとなり,ストラバイト生成が亢進した結果と考えられた.

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© 2013 日本家畜臨床学会・大動物臨床研究会
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