産業動物臨床医学雑誌
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原著
青森県で発生した子山羊の原発性銅欠乏症とミネラルサプリメント給与による予防効果
富岡 美千子塚越 絵梨朴 天鎬畑井 仁畔柳 正高松 利恵子寳示戸 雅之渡辺 大作
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2013 年 4 巻 1 号 p. 8-15

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抄録

2011年5月末,ザーネン種山羊38頭を飼育していた青森県内のA農場においてザーネン種山羊1頭(3カ月齢)で腰痿が認められた(症例1).7月には起立困難となり,予後不良と診断した.病理組織学的検査では,坐骨神経の膨化,断片化および断裂がみられた.また,後肢骨格筋では筋線維の群萎縮と硝子変性が観察された.2011年10月下旬〜11月中旬に症例1と同じ4月に生まれたザーネン種山羊3頭(症例2〜4)で後肢の歩行異常が認められ,12月にかけて進行性に悪化した.症例2〜4の剖検時血清Cu濃度は4〜9μg/dℓであり,著しく低下していた.病理所見は症例1と同様であった.2011年12月における血清Cu濃度の平均値は,母山羊群22μg/dℓ,育成山羊群13μg/dℓと著しく低く,同じ乾草を給与されていた繁殖雌牛群も平均33μg/dℓと低値であった.2012年2月から,Cuの補給のためミネラルサプリメントを母山羊にCuとして11mg/日/頭,育成山羊に5.5mg/日/頭ずつ飼料添加した.その結果,2012年4月の血清Cu濃度の平均値は,母山羊群95μg/dℓ,育成山羊群87μg/dℓおよび新生子山羊84μg/dℓであった.子山羊の血清Cu,鉄およびカルシウム濃度は5月には正常範囲であったが,放牧期の7月に有意に低下した.A農場の給与粗飼料および草地土壌中のCu含量はいずれも国内の基準値より低値であり,原発性Cu欠乏が示唆された.2012年11月の時点でミネラルサプリメントの給与開始後に出生した山羊に運動失調は認められていない.

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© 2013 日本家畜臨床学会・大動物臨床研究会
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