薬剤疫学
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原著
小児の急性気管支炎におけるベータ2刺激薬の処方実態
神垣 有美大森 崇小田嶋 博佐藤 俊哉
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2012 年 17 巻 1 号 p. 1-12

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抄録

目的:本邦でベータ2刺激薬(beta 2 agonist:BA)は急性気管支炎に対して,「気道閉塞障害に基づくこと」を前提として効能効果を持つが,近年,小児の急性気管支炎や風邪に対して処方されているとの報告があり,処方実態把握は重要な課題である.そこで,本研究ではレセプトデータベースを用いて小児の急性気管支炎に対するBA処方実態を明らかにし,小児科医へのインタビュー調査にて,その処方理由等を探索することとした.
研究デザイン:レセプトデータベース研究
方法:株式会社日本医療データセンターのレセプトデータベース調査,およびエキスパートインタビュー調査を実施した.2005年~2008年の間で,0~18歳に該当した約10万人を対象とした.上気道感染症,インフルエンザおよび急性気管支炎の全ての新規診断「Visit」を抽出し,新規診療開始日から21日間追跡した.新規診療開始日までに喘息ガイドラインに則った抗喘息薬の処方がある41,064 visitsを喘息群とし,それ以外の321,223 visitsを非喘息群とした.エンドポイントは新規診療開始日から21日間のBA処方とし,年齢階級別に2群間でBA処方割合を比較した.さらに,小児科医10名にインタビューを実施し,BAの処方理由等を聴取した.
結果:3~5歳の全対象者のうち,BAが年1回以上処方された割合は49.9%であった.急性気管支炎におけるBA処方割合は,3~12歳では喘息群,非喘息群ともに,ほぼ同じであった.さらに,喘息群のBA処方割合は年次減少傾向,非喘息群のBA処方割合は不変であった.インタビュー調査にて,BA処方根拠は気管支収縮が関与する気道閉塞,もしくは分泌物による気道内腔の狭小化を防ぐためとの意見に大別された.
結論:本データベース調査から,急性気管支炎におけるBA処方の現状が明らかになり,BA適正使用を推進するためには,特に非喘息患者に注目する必要があると考えられた. (薬剤疫学2012;17(1):1-12)

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© 2012 日本薬剤疫学会
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