2012 年 17 巻 1 号 p. 55-66
目的:日米での市販後安全性研究を比較することにより,日本で最良の安全性監視の方法を提言する.
方法:2010 年に日本で新たに承認された医薬品のうち,すでに米国では市販されている12品目を対象とした.まずは米国で承認された時点での薬剤に対する市販後の安全性の懸念と,それに対応して企業に研究実施が求められるPostmarketing Requirementを抽出し,日本については同じ薬剤で審査の段階で重点調査項目として議論された安全性の課題と,それに対応する市販後の安全性の研究について検討した.
結果:両国とも安全性の課題については共通することが多かったものの,対応する研究については,米国では安全性の懸念に応じた個別の研究であるのに対して,日本では通常の製造販売後調査や全例調査といった定型的なパターンであった.日本での理想の市販後安全性研究の提案については,比較群を必要とする研究は,学会,第三者研究機関に委ねるべきものや,全国的ながん登録の構築が望まれるものなど,企業独自の努力ではその達成に限界があるものがほとんどであった.
結論:日本でも2013年から医薬品リスク管理計画が実装されることとなるが,その際には国際的に通用する科学的な安全性監視計画の実施が患者の安全性確保につながる.これまでの市販後の調査を基盤として,日本でも実施可能な方策を産官学で検討していくことが喫緊の課題である.(薬剤疫学 2012;17(1):55-66.)