日本臨床外科学会雑誌
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症例
胆嚢内出血による胆嚢炎が発見の契機となった胆嚢癌の1例
辻 敏克芝原 一繁竹原 朗野崎 善成佐々木 正寿小西 孝司前田 宣延
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キーワード: 胆嚢癌, 胆嚢出血, 胆嚢炎
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2013 年 74 巻 1 号 p. 179-184

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抄録

症例は79歳の男性で突然の心窩部痛で症状が改善しないため,当院に救急搬送された.心窩部~右季肋部に圧痛を認め,血液検査では,白血球の上昇,貧血および肝胆道系逸脱酵素の上昇を認めた.腹部単純CT検査で胆嚢の腫大,壁の肥厚および周囲の脂肪織濃度の上昇を認め,急性胆嚢炎と診断された.胆嚢の減圧目的に経皮経肝的胆嚢ドレナージが施行されたところ,血性排液を認めた.1週間後の造影CTにて胆嚢底部に造影効果のある腫瘤を認め,胆嚢癌が疑われた.以上より,腫瘍出血による胆嚢炎を合併した胆嚢癌と診断した.手術は拡大胆嚢摘出術を施行した.胆嚢内には凝血塊が充満しており,底部に25×25×12mmの隆起性腫瘍を認めた.病理組織学的診断では,乳頭浸潤型の乳頭腺癌で漿膜下浸潤を認めた.本症例は,腫瘍出血による凝血塊が原因として胆嚢炎を発症し,治癒切除が可能であった胆嚢癌の1例である.若干の文献的考察を加え,報告する.

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© 2013 日本臨床外科学会
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