2013 年 74 巻 9 号 p. 2593-2597
総肝動脈血流が何らかの原因で閉塞している場合,種々の経路の側副血行路から肝動脈血流が維持されている場合が多い.このようなケースで膵頭十二指腸切除(PD)を行う場合,側副血行路からの肝動脈血流をいかに維持するかが重要である.血流の経路として,上腸間膜動脈(SMA)から膵周囲のアーケードを介する胃十二指腸動脈からの経路に依存することが多いが,左胃→胃壁→右胃動脈を介した経路が発達している場合がある.今回,早期十二指腸癌に対しPDを必要とした症例で,左胃→右胃動脈を介した経路が発達しており,これを温存することで動脈再建を行うことなく安全に手術を施行しえた1例を経験した.このような特異な血行動態を示す症例では,CT動脈造影をもとにした手術のプラニングと術中の血流量の確認が重要である.