日本臨床外科学会雑誌
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症例
分娩後に症状の増悪をきたした先天性胆道拡張症の1例
林 雅規折田 雅彦原田 剛佑弘中 秀治守田 信義濱野 公一
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2013 年 74 巻 12 号 p. 3449-3454

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抄録

症例は30歳の女性で,分娩前より腹痛と嘔吐を認めていた.分娩2日後に発熱と肝機能障害が出現し,当院に紹介となった.腹部CTで右上腹部に15cmの嚢胞性腫瘤を指摘され,胆嚢捻転症や後腹膜腫瘍等を疑い緊急手術を施行した.胆嚢は肉眼的に正常で,肝下面の巨大な腫瘤は総胆管であった.胆嚢摘出および胆道ドレナージ術のみ施行した.術後の胆道造影で膵胆管合流異常を伴う戸谷Ic型の先天性胆道拡張症と診断した.初回手術10日後に肝外胆管切除および左右肝管空腸吻合を行い,分流術後13日目に軽快退院した.
周産期に発症した先天性胆道拡張症の本邦36報告例のうち,分娩後に症状が発現・増悪した症例は14例で,黄疸の合併頻度が高い傾向にあった.分娩後に黄疸を合併する機序として,分娩後の内臓下垂による総胆管の屈曲などが考えられた.治療は胆道ドレナージを行い,状態が安定したのちに分流手術を行うことが望ましいと思われた.

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© 2013 日本臨床外科学会
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