日本臨床外科学会雑誌
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症例
ヘルニア嚢内に膿瘍を形成した虫垂炎の1例
大町 貴弘畑 太悟鈴木 衛水崎 馨
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2013 年 74 巻 3 号 p. 844-847

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抄録

症例は80歳,男性.数日前から出現した右鼠径部腫瘤と同部の圧痛,食思不振を主訴に来院.右鼠径部に腫脹があり,著明な圧痛が認められた.下腹部に腹膜刺激徴候は認められなかったが,CTにて右鼠径ヘルニアおよびヘルニア嚢内の液体貯留,軽度腫大した虫垂と回盲部の壁肥厚が認められた.WBC,CRPともに高値を示していたため,腸管もしくは大網壊死または虫垂炎を伴う鼠径ヘルニア嵌頓と診断し,緊急手術を施行した.手術所見は外鼠径ヘルニアで,ヘルニア嚢内に膿瘍形成が認められた.膿瘍の原因として虫垂炎が疑われたため,創を頭側に延長し虫垂切除を行った.ヘルニア嚢内に虫垂が逸脱するAmyand's herniaやRichter herniaは散見されるが,本症例のようにヘルニア嚢内に膿瘍形成をきたし発症した虫垂炎の報告は過去になく,非常にまれな病態と考えられたため,多少の文献的考察を加えて報告した.

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© 2013 日本臨床外科学会
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