日本臨床外科学会雑誌
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症例
大腸ステント断端の潰瘍にて腹壁浸潤様形態を呈したS状結腸癌腸閉塞の1例
三上 和久古田 浩之中村 崇袖本 幸男
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2013 年 74 巻 4 号 p. 989-993

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抄録

症例は65歳,男性.3日前からの腹痛,嘔吐にて受診.腹部CT検査にてS状結腸癌による大腸イレウスと診断し,準緊急にて大腸ステントを留置した.ステント留置直後に大量の排便を認め,翌日から食事を開始し,留置後29日目に腹腔鏡補助下直腸前方切除術を施行した.S状結腸は腹壁に吊り上がっていたために癌の腹壁浸潤と診断し,腹壁の合併切除を施行した.病理所見では腹壁を合併切除した部位は癌とは関係なく,ステント断端にて深い潰瘍を形成して漿膜側に炎症性変化をきたし,あたかも癌の腹壁浸潤様の形態を呈していたと診断した.本症例ではステント留置後にステントが移動して,腸管屈曲部に断端が長時間当たっていたことが原因と考えられた.ステント留置後には定期的な画像フォローが必要であり,屈曲部付近では可及的に長いステントを用いて,屈曲部にステント断端が当たる場合には早期手術が望ましいと思われた.

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