2013 年 74 巻 4 号 p. 998-1002
症例は57歳,男性.当院泌尿器科で左精巣腫瘍の手術後,化学療法を施行中であった.右下腹部痛と発熱を主訴に受診.WBC 39,490/mm3,CRP 21.78mg/dlと炎症反応の上昇を認め,腹部CT検査では右側結腸に炎症像を認めた.抗生剤で経過をみたが改善しないため,入院5日目に右半結腸切除術を施行.手術後も抗生剤にはほとんど反応せず,術後4日目の腹部CT検査では広範囲に多発性肝膿瘍を認め,術後10日目永眠された.切除標本での病理組織診断でアメーバが検出された.アメーバ感染者の多くは無症状で,約10%が腸管内に侵入して腸管アメーバ症を引き起こすとされている.その発生機序は明らかではないが,宿主側の発症要因としてステロイド剤や抗癌剤の使用などが指摘されており,自験例のように化学療法施行中のため易感染性となっている場合は重症化しやすい可能性が示唆された.