2014 年 75 巻 1 号 p. 250-254
低栄養かつperformance status(以下,PSと略記)の低い患者に対し低侵襲手術を行った稀な症例を報告する.症例は胃癌に対して胃全摘術,多発結腸癌に対して右半結腸切除術,肺放線菌症に対して左肺下葉切除術の既往があった.術後定期観察中に内視鏡検査で十二指腸多発早期癌と診断された.初診時の全身状態が悪く,在宅栄養療法を2カ月間行った後,低侵襲を目的として膵温存十二指腸切除術を行った.胆嚢摘出時に偶発的にリンパ節転移を伴う胆嚢癌が発見されたが,リンパ節郭清や膵頭十二指腸切除術は追加しなかった.術後27日目に退院した.多重消化器癌手術後でPSの低い患者に対し,適切な栄養管理および低侵襲の術式は有用であろうと思われた.