2014 年 75 巻 4 号 p. 957-962
症例は62歳,男性.12年前に胸部食道癌に対し右開胸開腹食道切除・3領域郭清・後縦隔経路胃管再建・頸部吻合術が施行された.今回,検診内視鏡検査にて胃管上部後壁に2型胃癌(4.5×2.5cm tub2 cT2cN0cH0cP0cM0 cStage IB)を認めた.術前S-1 80 mg/m2 14日間投与により腫瘍縮小を確認後,手術を施行した.術前腫瘍周囲に装着したクリップを確認し腫瘍部の胃管を全層切除し縫合閉鎖した.ICG蛍光法を用い残存胃管の血流を確認し終了した.病理所見では癌細胞は消失し化学療法効果はGrade 3であった.粘膜下層から筋層に肉芽組織や線維化を認め,治療前の深達度はT2と考えられた.縫合不全や狭窄を認めず,術後3年1カ月無再発生存中である.
今回,術前S-1化学療法が奏効し胃管が温存可能であった食道切除後縦隔胃管再建後の進行胃管癌を経験したので報告する.