日本輸血細胞治療学会誌
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原著
多変量解析による貯血式自己血採血におけるエリスロポエチン製剤投与時の痛みの因子同定
丸橋 隆行横手 恵子青山 千夏堀越 晃輔菅井 貴裕西本 奈津美須佐 梢関上 智美橋本 陽子滝沢 牧子横濱 章彦
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2013 年 59 巻 6 号 p. 805-812

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抄録

自己血貯血時には800ml以上の場合に限りエリスロポエチン製剤(erythropoiesis-stimulating agent, ESA)の使用が認められている.最近になりエポエチンα(EPOα)に加えエポエチンβ(EPOβ)も上市され2種類の皮下注射用ESA製剤が使用可能となったが,2剤間の投与時の痛みに差があることが以前より国内外から報告されている.今回,我々は自己血貯血患者にESAを投与したときの痛みの関与する因子を解析した.ESA投与時にVisual Analogue Scale(VAS)とFace Scale(FS)を患者が記載した.EPOα群100名,EPOβ群103名,のべ投与回数405回を解析の対象とした.1回目投与時の解析ではEPOα群は有意にVASが高く(p=0.0085),投与全体405回の解析でも同様であった(p<0.0001).VASを用いて多変量解析を行うとEPOαと女性が有意に痛みに関与していた.さらにESA製剤と性別で4群に分け解析すると,女性にEPOαを投与したときのみ有意にVASが高かった.以上より女性にEPOαを投与する場合には配慮が必要であるが,その痛みの差はいずれの製剤を使っても少なくとも貯血計画に影響を与えるほどのものではないと思われた.

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© 2013 日本輸血・細胞治療学会
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