日本家畜臨床学会誌
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原著
CIDRを併用した過剰排卵処置に対するホルスタイン種未経産牛における卵巣の反応と回収胚の状態
福田 卓巳大澤 健司打座 美智子爲岡 奈々恵遠藤 保大井 隆弘荒屋 孝一下村 則夫広沢 悠子居在家 義昭
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2008 年 31 巻 3 号 p. 137-142

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抄録

効果的な過剰排卵処置法の開発をする目的で、CIDRを併用した過剰排卵処置における卵巣反応性と回収胚数および品質との関係について検討した。ホルスタイン種未経産牛15頭を供試し、CIDRを挿入した群(挿入群;n=6) と挿入しなかった群(非挿入群;n=9) に分け、挿入群にはDay14(Day0=発情日) にCIDRを膣内に挿入した。全頭に過剰排卵処置開始前3~5日に安息香酸エストラジオール2mgを注射した。過剰排卵処置は挿入群ではDay19~22から、非挿入群ではDay10~12から開始し、FSH24AUを4日間漸減注射した。FSH注射最終日にPGF類似体を注射すると同時に、挿入群ではCIDRを抜去した。人工授精(AI) を発情発現日の翌日の朝と夕の2回行い、初回AI時にはGnRH類似体を注射した。胚回収はAI後6日目に実施し、回収した胚の数と品質を調べた。処置を行った発情周期のDay2から、過剰排卵処置開始前日まで、隔日に超音波検査を行って卵胞数とその直径により小卵胞(2~5mm)、中卵胞(6~9mm)、大卵胞(≧10mm) に3区分し、それぞれの数を計測した。また、胚回収前日に黄体数および直径≧10mmの大卵胞数を計測した。さらに、胚回収時の末梢血中エストラジオール‐17β(E2) 濃度をRIA法によって測定した。小卵胞数は、挿入群ではDay4に最多およびDay12に最少、非挿入群でDay6に最多およびDay10に最少となった。挿入群において、黄体数および回収胚数は多く、胚回収前日における大卵胞数は少ない傾向が認められた。さらに、両群において、過剰排卵処置開始前日の小卵胞数と胚回収前日の黄体数および大卵胞数の合計との間には有意な正の相関が認められた。胚回収時のE2濃度と大卵胞数および回収胚の品質には有意な相関は認められなかった。以上の結果より、過剰排卵処置前日に小卵胞が多数認められる場合には、過剰排卵処置に対する反応性が良好であることが明らかになった。また、CIDR挿入により過剰排卵処置に対する反応性が向上する可能性が示唆された。

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© 2008 日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会
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