食品照射
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振とう抽出法による放射線照射した食肉およびサーモンにおける2-アルキルシクロブタノン類の検知
堤 智昭足立 利華高附 巧根井 大介亀谷 宏美等々力 節子松田 りえ子手島 玲子
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2013 年 48 巻 1 号 p. 31-37

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抄録

アルキルシクロブタノン法は,食品中の脂質から放射線照射特異的に生じる2-ドデシルシクロブタノン(DCB)と2-テトラデシルシクロブタノン(TCB)を検知指標として照射の有無を判定する方法である。DCBおよびTCBの抽出法としては,ソックスレー抽出法が広く用いられているが,長時間を要する欠点がある。本研究では,分析法の迅速化を目的として,抽出時間の短縮が期待される振とう抽出法の評価を実施した。振とう抽出法により抽出されたDCB量は,ソックスレー抽出と比較すると,牛肉で86~104%,豚肉で77~99%,鶏肉で108~121%,およびサーモンで82~96%であった。また,TCB量はソックスレー抽出法と比較すると,牛肉で85~108%,豚肉で90~120%,鶏肉で101~107%,およびサーモンで93~101%であった。また,両抽出法で得られたSIMクロマトグラムに顕著な違いは認められなかった。以上より,振とう抽出法とソックスレー抽出法の当該化合物の抽出効率に顕著な違いはないと考えられた。さらに,肉類およびサーモンの未照射と照射試料に対して,振とう抽出法を適用した場合でも照射の判定が正しく可能であるか評価した。全ての試料について振とう抽出法でも未照射および照射の判定が正しく行え,各判定項目の内容についてもソックスレー抽出と同様に判定に支障は無かった。以上の結果より,振とう抽出法は,ソックスレー抽出に比べ1/6程度に作業時間の短縮が可能であることから,検査の迅速化が図れるものと考えられた。

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© 2013 日本食品照射研究協議会
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