2012 年 68 巻 3 号 p. 535-546
堆積岩などの比較的多孔質な岩盤を対象としたトレーサー試験を行う際は,トレーサーの主要な移行経路となる亀裂内の移流・分散パラメータ(流速,分散係数)に加え,亀裂から岩石基質部への拡散現象を支配するパラメータ(マトリクス拡散係数)の評価が求められる.しかし,単成分のトレーサー試験を一回実施しただけでは,これらのパラメータを同時に評価することは困難である.本稿では,これらのパラメータをトレーサー試験結果から同時に評価する際の結果の妥当性について,一次元の移流・分散とマトリクス拡散を考慮した支配方程式の理論解を用いて説明するとともに,各パラメータを一度に決定するための新しい試験方法を提案した.