2012 年 68 巻 2 号 p. I_888-I_893
ベトナムは南北に長い海岸線を有し,沿岸域災害の危険性が高い国と考えられる.しかし,北部や中部と比較して,一般的に南部地域は台風や高潮災害の危険性が小さいと考えられてきた.本稿は,ベトナム南部沿岸域の災害,特に高潮脆弱性の検証を試みるものである.急成長を遂げる海岸都市において現地調査を行い,著しい海岸侵食により危険に瀕している集落や河川中洲の極めて低平な地帯に広がる集落を確認した.住民インタビューでは台風を危惧する声は皆無に近かった.一方で,過去60年間の台風経路分析より,北部や中部と比べて,台風の発生がおよそ1/2から1/3と無視できない頻度であることを示し,また50年前には1m程度の高潮が発生したことを数値解析に基づき明らかにした.これらの結果より,近年における最大クラスの台風が当該都市を襲った場合の危険性について指摘した.