2012 年 63 巻 5 号 p. 322-324
顔面神経麻痺後の異常神経再生による「ワニの涙」症候に対する根本的治療は無い。この現象は唾液支配分枝が涙腺を異常支配する事により起こるとされている。
今回筆者は右顔面神経麻痺後の「ワニの涙」症候を針治療にて急速な改善を認めた一例を経験したので報告する。用いた針は和針(ステンレス製)1寸6分,3番である。また取穴は,右聴宮,右太陽,右和髎であった。10分間の置針一回のみで「ワニの涙」症候は完全に消失し,再発は無かった。しかし食事中の瞼裂狭小は改善するものの完全には消失しなかった。