2014 年 55 巻 6 号 p. 360-366
初診時の精査では原因の特定が困難な慢性肝炎が存在する.症例は71歳,女性.全身倦怠感,食思不振を主訴に来院した.B型,C肝炎ウィルスは陰性,自己抗体は陰性,IgGは1919 mg/dl,抗ミトコンドリア(M2)抗体陽性であった.総ビリルビン26.0 mg/dl,PT-INRは1.31であり重症化を示唆していたのでプレドニゾロン40 mg/dayにて治療を開始したところ速やかに肝機能は改善した.治療後の肝生検では小葉間胆管の破壊とけずりとり壊死がみられ,慢性肝炎(F1,A1)であった.今後自己免疫性肝炎(AIH),原発性胆汁性肝硬変(PBC),またはPBC-AIH overlap syndromeに推移する可能性があるcryptogenic chronic hepatitisと考えられた.