2013 年 63 巻 2 号 p. 133-140
【背景・目的】 肝不全の治療には肝移植が効果的な方法であるがドナー不足の現状がある. 本研究はドナー不足を補えるような効果的な補助肝臓の開発を目指している. 【対象と方法】 雄性ウイスター系ラット300-400gを用いた. 2-3 cmの分節空腸をその栄養動静脈を温存して単離する. その粘膜を削除した中に同じラットから摘出した左葉をミンチし, これを充填して補助肝臓を作成した. 決められた期間に犠牲死させ腸管グラフト内の肝組織片の状態を組織学的に検討した. 【結 果】 移植後10日までは充填した肝組織片はお互いに融合し肝の小葉構造を形成して増殖を続けたがそれ以降になると次第に壊死融解する部分が大きくなった. 【結 語】 腸管グラフト内への肝組織片移植法は補助肝臓として有望であると考えられたが肝組織片の増殖, 増大に伴う血流の維持をどのように計るのかが今後の課題である.