2013 年 63 巻 2 号 p. 153-157
症例は49歳, 男性. 2008年2月血尿と頻尿を主訴に泌尿器科を受診し膀胱頂部に腫瘍を指摘された. 直腸癌膀胱浸潤の診断で当科に紹介となり, 直腸前方切除, 膀胱部分切除を行った. 病理結果は高分化腺癌 (tub1) SI (膀胱), int, INFb, ly1, v0, N1, H0, M0, P0 stageIIIaで膀胱切除断端は陰性であった. 術後1年9ヶ月で血尿が出現し, 腹部CTで膀胱底部から前立腺に連続する腫瘍を認めた. 膀胱癌を疑い膀胱鏡による生検を行ったが生検結果は高分化腺癌であった. 直腸癌の再発と診断し, 膀胱前立腺全摘術, 両側側方リンパ節郭清を施行した. 摘出標本では前回の膀胱切除部は瘢痕組織のみで残存腫瘍はなく, それとは連続しない反対側の膀胱底部を中心に腫瘍を認めた. 病理組織学的には腫瘍細胞は膀胱粘膜面からの浸潤増殖であり膀胱内播種による再発と考えられた.