2013 年 70 巻 11 号 p. 637-646
タンパク質の機能上の弱点を改善するために高分子化合物の優れた性質を導入する「タンパク質コンジュゲート」の創製が脚光を浴びている.本研究では,牛乳アレルギーの主要抗原の一つであるβ-ラクトグロブリン(βLG)にデキストランを導入した新規コンジュゲート(DG-βLG)を創製し,アレルギー低減化牛乳の開発に向けた基盤の構築を図った.還元末端にグリシルグリシンを導入したデキストランをN-ヒドロキシスクシンイミドエステル化し,穏和な条件下でβLGと反応させてDG-βLGを得た.分子当たり5.2個のアミノ基にデキストランが結合した結果,抗βLG抗体に対する反応性の抑制,生体内での抗βLG抗体産生量の抑制,および酵素消化に対する耐性の改善,を介してβLGの免疫原性は大きく低減化することが明らかとなった.また,DG-βLGでは苦味系アミノ酸の被覆によって,呈味性も改善されることが判明した.