オレオサイエンス
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特集総説
リポソームテクノロジーを基盤とするDDSの構築
丸山 一雄
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2010 年 10 巻 1 号 p. 31-40

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抄録

リボソームは薬物, 抗原タンパク質, 核酸遺伝子などの運搬担体として有望視されてきた。近年, PEGで表面コーティングされた新しいタイプのリポソームが開発されている。PEG-リポソームは細網内皮系組織 (RES) に取り込まれにくく, 高い血中滞留特性を示す。その特性とEPR効果によって, PEG-リポソームは, がん組織に効率よく集積することができる (パッシブターゲティング) 。我々は, 固形がん組織にパッシブターゲティングされた後にアクティブターゲティングでがん細胞に結合できるトランスフェリン (TF) 修飾PEG一リポソームを開発した。TF-PEG-リポソームは, 血中滞留性と高いがん組織集積性を示し, TFレセプターを介してがん細胞内に取り込まれる。事実, オキサリプラチンをTF-PEG一リポソームに封入した製剤は, オキサリプラチン単独よりもより高い腫瘍内濃度と抗腫瘍効果を示した。リポソーム技術を基に超音波造影ガス (perfluoropropane) を封入したバブルリポソームを開発した。バブルリポソームは, 超音波照射によってキャビテーションを誘発し, その時生じるジェット流で薬物や核酸を種々の細胞に導入可能である。また, マウスにプラスミドDNAとバブルリポソームを尾静注し, 体外より肝臓に向けて超音波照射すると, 肝臓に効率良く遺伝子導入できることを示した。本法は, 非侵襲的な治療システムの構築が可能であり, 今後の発展が期待される。本解説では, TF-PEG-リポソームとバブルリポソームによるDDSについて紹介する。

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© 2010 公益社団法人 日本油化学会
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