日本温泉気候物理医学会雑誌
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原著
病院施設内の浴槽水質変動における衛生化学的検討—曝気実験による浴槽水質変動要因の推定と老化現象—
森 康則出口 晃美和 千尋岩崎 靖鈴村 恵理前田 一範浜口 均島崎 博也田中 紀行川村 陽一
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2012 年 75 巻 3 号 p. 195-203

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抄録

 温泉を利用した病院施設において、複数の浴槽の成分分析と分析値の比較を行うとともに、その成分変動の要因を明らかにするために、源泉水を用いた室内曝気実験を行った。同病院では、同敷地内で湧出するアルカリ性単純温泉を用いている。湧出直後の源泉水と各浴槽水の成分を比較したところ、大きな乖離が認められた項目は、硫酸イオン、亜硝酸イオン、硝酸イオンであった。特に硫酸イオンの濃度上昇が顕著であり、120∼450%の濃度上昇が認められた。この変動要因を推定するために、源泉水を空気と窒素で1ヶ月間曝気を継続し、その間の時系列的な成分変動を調べた。その結果、硫酸イオンについては、曝気の継続に伴う濃度上昇の傾向が認められた。その傾向は窒素曝気よりも空気曝気の方が顕著であった。硝酸イオン、亜硝酸イオンについては、曝気に伴う濃度変動は認められなかった。このことから、浴槽における硫酸イオン濃度の上昇は、源泉水中の硫黄化合物の空気酸化による影響が考えられ、また、浴槽における硝酸イオン、亜硝酸イオン濃度の変動は、入浴に伴う発汗等の窒素分の空気酸化によるものであることが示唆された。

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© 2012 日本温泉気候物理医学会
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