Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2187-4999
Print ISSN : 1348-9844
ISSN-L : 1348-9844
臨床研究
食道表在癌の質的診断,深達度診断における拡大内視鏡の有用性について
大嶋 隆夫為我井 芳郎永田 尚義櫻井 俊之矢郷 祐三林 裕子酒匂 赤人森畠 康策保坂 浩子小飯塚 仁彦秋山 純一今村 雅俊正田 良介正木 尚彦上村 直実斉藤 澄
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 68 巻 2 号 p. 27-30

詳細
抄録

 食道表在癌に対するESDは,根治性とQOLの観点においてその有益性は極めて大きく,また質的・深達度診断に際して拡大内視鏡観察が有用であると言われている。ESD一括切除を施行した食道表在癌の拡大内視鏡所見と組織所見との比較検討を行なった。内視鏡所見は有馬分類,井上分類に準じた。当センターでのESDの適応は,深達度m1~2までの表在癌で大きさは問わない事とし適切な術野の確保が可能な事を絶対条件とした。2004年1月から2005年4月の間にESDを施行した食道表在癌は13例,14病変で,うち12例(男11例,女1例,平均69.2歳)で拡大内視鏡観察を行なった。術前の深達度診断では,有馬分類のtype 2,type 3,type 4に相当するのが各々1例,9例,2例であり,また井上分類のtype Ⅲ,type Ⅴ1-2,type Ⅴ3に相当するのが各々1例,9例,2例である事から,dysplasia : 1例,m1-2 : 9例,m3以深が2例と診断した。病理組織学的には,severe dysplasia 1例,m1癌4例,m2癌5例,m3癌0例,sm1癌2例であった。深達度診断の正診率はm1-2,m3以深の2群の判別とすると100%であった。平均6.9カ月の経過観察期間間で,全例で腫瘍の遺残再発は認めていない。偶発症は食道穿孔を1例認めたが保存的に軽快した。食道表在癌に対する拡大内視鏡観察は,その質的診断,深達度診断に有用であった。

著者関連情報
© 2006 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
前の記事 次の記事
feedback
Top