消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
臨床研究
食道癌に対するアルゴンプラズマ凝固法による治療の試み
一志 公夫高村 誠二柵山 年和長谷川 拓夫渡辺 一裕稲垣 芳則高橋 宣胖
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1999 年 54 巻 p. 48-51

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抄録

 アルゴンガスを利用した非接触型高周波凝固装置を使用したアルゴンプラズマ凝固法(APC)のpilot studyを食道癌に対して行い,治療の利点と食道癌に対する適応について検討した。1997年1月より98年12月までに当院および関連病院で経験した42例の食道癌症例中APC治療を行った11例を対象とした。APC治療11例中1例は無治療例であり,8例は前治療に効果がなく内視鏡の通過ができない進行食道癌であった。また1例はEMRおよび放射線治療後の局所再発例であり,その他の1例は食道癌術後の難治性瘻孔症例で,APCとメタルステントを挿入し食事が可能となった。平均2.2回のAPC治療後腫瘍は縮小し,進行食道癌10例中9例にステントの挿入ができたが,1例はAPC治療途中で腫瘍の気道浸潤による呼吸不全のためステントの挿入を中止した。8例に3分粥以上の食事摂取ができたが,1例は癌性腹膜炎による大腸狭窄によりできなかった。いずれも重篤な合併症はなかったが,APC後8例に発熱,5例に胸痛・胸やけ,3例に嘔吐を認めた。治療適応はステント挿入後のingrowthやovergrowthした腫瘍の焼灼やEMR後の遺残腫瘍,局所再発あるいは早期食道癌の焼灼などであるが,進行食道癌に対する前治療に効果がない,ステント挿入前の腫瘍のreductionにも有効であり,適応の1つと考えられた。

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© 1999 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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