順天堂医学
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原著
腎における肺サーファクタント蛋白Dの局在
眞野 訓大井 洋之玉野 まり子池上 真知子Jeffrey A. Whitsett富野 康日己
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2006 年 52 巻 1 号 p. 84-93

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抄録

目的: 肺サーファクタント蛋白Dpulmonary surfactant protein D (SP-D) はコレクチンに属し, 様々な微生物の表面の炭水化物に結合することにより, 肺の宿主防御に重要な役割を果たしている. ヒトにおいてSP-DのmRNAや蛋白の, 肺以外の臓器の粘膜表面にも発現すると報告されているが, 腎でのSP-D蛋白の局在部位は報告により異なっている. 本研究の目的は, ヒトの腎におけるSP-Dの局在部位を特定し, ヒトとマウスの腎での局在を比較することで, その意義を明らかにすることである. 対象および方法: 正常腎組織と原発性糸球体腎炎患者の腎生検組織を用い, SP-Dの免疫組織染色を酵素抗体法で行った. 正常マウスとSP-D遺伝子を強発現させたマウスおよび血清SP-D濃度を増加させたマウスの腎組織の免疫組織染色も行った. ヒトの正常腎組織を用い, SP-Dとデコリンの局在部位を免疫組織染色により比較した. 結果: ヒトの腎でSP-Dは, 遠位尿細管上皮に染色されたが, 糸球体にはほとんど染色されなかった. 正常腎組織と腎炎患者の腎組織では, SP-Dの局在部位や染色強度に有意な差は認められなかった. SP-Dは, 正常マウスとSP-D遺伝子を強発現させたマウスの腎には染色されなかった. 血清SP-D濃度を増加させたマウスではSP-Dは糸球体に認められたが, 尿細管にはわずかな染色を認めるのみであった. SP-Dとデコリンの染色部位は, 一致していなかった.結論: SP-Dはヒト糸球体に認められることがあるが, 血清SP-D濃度を増加させたマウスの検討より血清SP-Dが上皮細胞に捕捉されたために染色される可能性が考えられた. SP-Dは, マウスの腎では染色されず, ヒトの腎では遠位尿細管に染色され, 各種原発性糸球体腎炎患者の腎でも変化は認められなかった. SP-Dは, ヒトの遠位尿細管に恒常的に局在していると考えられた.

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© 2006 順天堂医学会
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