順天堂医学
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原著
高血圧発症後の持久的運動トレーニングが自然発症
高血圧ラット心臓のニトロ化ストレスに及ぼす影響
古川 覚木村 博子向田 政博山倉 文幸神野 宏司池田 啓一
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2008 年 54 巻 3 号 p. 308-317

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抄録

KEIICHI IKEDA目的: 本研究は, 高血圧を発症した自然発症高血圧ラット (SHR) に10週間の持久的運動トレーニングを行わせ, 同週齢のSHRと心臓の3-ニトロチロシン (3-NT) 濃度, スーパーオキシドジスムターゼ (SOD) および一酸化窒素合成酵素 (NOS) の酵素量および活性を比較することにより, SHR心臓のニトロ化ストレスに及ぼす持久的運動トレーニングの効果を検討することを目的とした. 対象および方法: 15週齢のオスSHR20匹を, コントロール群 (25wk Cont群) および持久的運動トレーニング群 (25wk Ex群) に10匹ずつ分けた. 25wk Ex群には飼育ケージに取り付けられたカウンター付き回転ホイールにおける自発走トレーニングを10週間行わせた. 持久的運動トレーニング期間終了後, 両群のラットの心臓懸濁液を分画し3-NTの検出, Mn-SODおよびCu, Zn-SODの酵素量および活性の測定, さらに血管内皮型NOS (eNOS) 酵素量の測定を行った. また, 免疫組織染色により心組織の3-NT染色を行った. 結果: 持久的運動トレーニングはSHRの安静時収縮期血圧の上昇を抑制しなかった. しかしながら, 持久的運動トレーニングを行った25wk Ex群は25wk Cont群よりもミトコンドリア, 小胞体および原形質膜を含む顆粒画分の3-NT濃度が有意に低く持久的運動トレーニングが心臓のニトロ化を抑制していることを示していた. この変化は心臓の免疫組織染色においても確認することができた. また, 25wk Ex群のMn-SOD量は25wk Cont群よりも増加しており持久的運動トレーニングの効果が観察された. 結論: SHRの高血圧発症後の10週間の持久的運動トレーニングは心臓におけるMn-SODを増加させ, 心臓のニトロ化ストレスを軽減することが明らかになった.

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© 2008 順天堂医学会
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