順天堂医学
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原著
IgA腎症における血清IgA/C3比の経過とその意義
児玉 史子大澤 勲山路 研二稲見 裕子大井 洋之堀越 哲富野 康日己
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キーワード: IgA腎症, 血清IgA/C3比, 腎機能
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2008 年 54 巻 3 号 p. 337-343

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抄録

目的: IgA腎症例の血清IgA/C3比の時間経過による変化を検討する. 対象: 当院当科で実施した腎生検でIgA腎症と診断され, その後平均6.82年の経過を追えた81症例. 方法: 診断時およびその後の血清IgA/C3比の変動と臨床データ (尿所見, 組織所見, 血清Cr値, eGFR) およびステロイド使用の有無別での血清IgA/C3比の解析を行った. 結果: 血清IgA/C3比の平均値は, 診断時4.33±1.67から観察終了時3.32±0.97へと低下 (p<0.0001), 血清IgAは367.89±129.03mg/dlから328.69±100.36mg/d1へと低下し (p<0.0001), 血清C3は88.27±18.57mg/dlから100.14±16.69mg/dlへと上昇した (p<0.0001). 組織所見別, 尿所見別, ステロイド治療の有無別では, どの群においても時間経過後血清IgA/C3比は有意に低下したが, いずれも3.01以上を示した. 同時に, 血清IgAは有意に低下し血清C3は有意に上昇した. 但し, 経過中血清Cr値が30%以上上昇した腎機能悪化群では, 血清C3は上昇することなく, 腎機能不変群に比し低値を示した (p=0.0207). 結論: IgA腎症において, 発症初期の血清IgA産生亢進の状態は何らかの理由で時間の経過と共に低下すると考えられる. また, 腎機能が悪化する症例ではC3消費が強い可能性が示唆された. 血清IgA/C3比は, 年余の経過を経た時期でも3.01以上を示しており, 腎生検前診断に有効と考えられた.

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