植物環境工学
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論文
未熟果実認識によるイチゴ収穫ロボットの衝突回避制御
林 茂彦武下 大作山本 聡史齋藤 貞文佐賀 清崇芋生 憲司
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2013 年 25 巻 1 号 p. 29-37

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抄録

イチゴの移動栽培への適用を目的に, 栽培ベッド横移送ユニットと定置型収穫ロボットを組み合わせた定置型ロボットシステムを用いて, 近傍果実を傷つけることなく対象果実に接近する障害物回避制御アルゴリズムを開発した. 果実の下側に設置したステレオビジョンカメラを用いて着色果実と未熟果実の位置関係を求め, 接近時の障害となる未熟果に傷つけないように最適な接近方向を決定した. そして, 採果エンドエフェクタのハンドアイカメラで検出した果柄を基にビジュアルフィードバック制御により果柄に接近した. 果実接近方向の検出試験, 果柄への進入試験および収穫試験を行い, 以下の知見が得られた.
栽培ベッドから下垂するイチゴ果実を下側から撮影し, 画像処理を施すことにより, 着色果実と未熟果実を識別することができ, それらの位置関係から採果エンドエフェクタが接近する方向を決定することができた. 接近方向の検出成功率と, その検出精度は, ‘あまおとめ’で89.2%および1.75°, ‘紅ほっぺ’で93.3%および1.58°であった.
ステレオビジョンユニットにより導出した接近方向から収穫対象果実を撮影することで, 正面からの撮影に比べ果柄の検出精度が向上し, ‘あまおとめ’で80.0%, ‘紅ほっぺ’で76.7%であった. さらに, 果柄検出に基づくビジュアルフィードバック制御により果柄に接近することで進入精度も高く, ‘あまおとめ’で73.3%, ‘紅ほっぺ’で78.3%であった. しかし, 複数の果柄が進入することが散見された.
障害物回避制御機能を定置型ロボット収穫システムに埋め込むことにより栽培ベッドの横移送と連動した自動収穫が可能であった. 複数果実の採果, 収穫適否の誤判定, 栽培ベッド停止時の果実振動などが発生し, これらへの対応が今後の技術課題である.

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© 2013 日本生物環境工学会
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