2012 年 27 巻 1 号 p. 22-27
75歳,男性。1年前より自覚した右腋窩皮膚腫瘍に対して近医で生検術を施行され,腎細胞癌皮膚転移の診断で加療目的に当院紹介受診した。精査により原発巣と考えられた右腎摘出術および,右腋窩皮膚腫瘍切除術を施行した。病理組織検査により腎細胞癌および,皮膚転移と診断した。術後1ヵ月頃より右耳後部の腫脹に気付き,精査によりワルチン腫瘍を疑われた。初回手術の6ヵ月後に右耳下腺腫瘍核出術を実施し,腎細胞癌耳下腺内リンパ節転移と診断した。腫瘍の残存が疑われた部位があり,耳下腺浅葉摘出術を追加した。初回手術の9ヵ月後に左腎および左副腎への多発転移を認め,分子標的薬治療を開始した。初回術後1年9ヵ月の時点で,分子標的薬治療を継続しているが,腋窩皮膚および耳下腺に再発は認めない。腎細胞癌の皮膚転移の頻度は比較的少なく,皮膚および耳下腺内リンパ節への多発転移の報告はなく,稀な症例と考えられる。