2013 年 28 巻 2 号 p. 185-189
症例は70歳,男性。生下時より恥骨部に瘻孔があるも放置していた。浸出液が多くなってきたため当科受診となった。生検を行った結果,病理組織学的には中分化型腺癌であった。免疫染色でCEA陽性,CK20陽性,CK7一部陽性であったため,腸管型腺癌の皮膚転移を疑い消化管の精査を行ったが,腫瘍は認めなかった。PETを含む全身検索ではリンパ節転移や遠隔転移は認めなかった。原発巣は恥骨前部の瘻孔すなわち先天性恥骨前瘻孔と診断し,腫瘍の拡大切除および腫瘍切除後の欠損部を縦型腹直筋皮弁で再建した。先天性恥骨前瘻孔は成因に定説はない。排泄腔遺残による仮説に基づき中分化型腺癌は先天性恥骨前瘻孔から生じたと考えられた。先天性恥骨前瘻孔の報告は少ない上に癌化した報告はなく,稀な症例と考えられる。