2012 年 27 巻 5 号 p. 710-715
症例は44歳男性.大酒家で,8年前より慢性膵炎を指摘されていた.2012年1月に激烈な背部痛をきたし近医に入院.入院翌日に突然吐血し,上部消化管内視鏡にてVater乳頭部からの出血を確認した.MR angiographyにて下膵十二指腸動脈(IPDA)から膵嚢胞内出血を指摘され,当院へ紹介となる.CTにて,膵頭部に35mm大の仮性嚢胞を認め,IPDAに径7.7mm大の嚢胞内仮性動脈瘤がみられ,hemosuccus pancreaticus(HP)と診断した.転院時,止血が確認されており,待機的に経カテーテル的動脈塞栓術(TAE)を施行した.上膵十二指腸動脈中枢側から仮性動脈瘤を超えIPDAに至るまで塞栓した.術後は合併症なく退院となった.HPは比較的まれであり,IPDAが原因であることは極めて報告が少ない.TAEにて治療可能であったIPDAを責任血管とするHPを経験したため報告する.