2013 年 28 巻 5 号 p. 615-621
症例は80歳と67歳のいずれも女性で,低血糖症状で当院に紹介され,各種血液,画像検査及び選択的動脈内カルシウム注入試験で膵体尾部のインスリノーマと診断された.両症例に対し脾動静脈を温存した腹腔鏡下脾温存膵体尾部切除術を施行した.合併症は1例でGrade Bの膵液瘻を認めたが保存的に軽快した.脾動静脈を温存した腹腔鏡下脾温存膵体尾部切除術はその手技の煩雑さから未だ一般的に普及していないが,適切なアプローチ法に習熟することで安全に施行可能であり,膵縮小手術の標準術式の一つとなり得ると考えられた.