山口医学
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症例報告
肝膿瘍の発症により診断し得た胃癌の1例
花園 忠相野口 哲央森 健治坂井田 功
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キーワード: 胃癌, 肝膿瘍
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2013 年 62 巻 1 号 p. 49-53

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抄録

症例は70歳代男性.2001年に大腸癌と診断され,右半結腸切除術を施行されている.2011年11月,発熱,上腹部痛が持続するため近医受診.腹部エコー及び腹部CTで肝膿瘍を認めたため精査,加療目的のため当院紹介,入院となった. 入院後施行したMRIで肝S5下縁に肝膿瘍を疑う腫瘤及び胃前庭部に腫瘤を認めた.肝膿瘍に対しては経皮経肝膿瘍ドレナージ及びスルバクタム・セフォペラゾン(SBT/CPZ)の投与を行い,膿瘍の縮小が得られた.膿瘍の培養ではSt. milleri Grpが検出され,細胞診はclassⅠであった.また,上部消化管内視鏡検査を施行し,胃角部前壁に2型進行胃癌が発見されたため,当院外科転科となり幽門側胃切除術が施行された. 大腸癌に合併した肝膿瘍の報告は散見されるが,胃癌との合併の報告は比較的稀である.大腸癌に肝膿瘍が合併する機序としてはmucosal barrierの破壊が原因による経門脈性感染と考えられているが,胃癌でも同様に経門脈性感染が原因の一つと考えられた.肝膿瘍の原因として上部消化管疾患の検索も必要と考えられた.

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© 2013 山口大学医学会
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