電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン
Online ISSN : 2186-0661
ISSN-L : 1881-9567
解説論文
情報循環システムとソーシャルウェア
曽根原 登
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2009 年 2009 巻 9 号 p. 9_29-9_38

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抄録

ICT(Information and Communication Technology)は,あらゆる経済活動やコミュニティ活動に浸透した.その結果,社会に新たな情報循環が生まれ,人間の価値観の多様化も急進展した.しかし,この情報洪水の中で,社会の不信·不安や人々の閉塞感はむしろ深まっている.この原因には,社会を取り巻く情報環境が急速に変化しているにもかかわらず,情報を受容する人間や社会が十分に適応していないことが挙げられる.一方,ICT基盤が整備された後の先進諸国での経済発展と雇用確保は,知識サービス産業,知的情報産業へシフトする傾向にある.これはグローバル化,情報化が進展した世界では,価値の高い情報やサービスを財として流通させる「知の大競争」をいかに勝ち抜くかという課題でもある.本文は,まず,ICT社会の要請として,ソーシャルメディアの課題,利用者主導社会への転換課題,社会関係技術の重要性について分析する.次に,ICTを活用した社会関係資本の再構築,社会の安定化とイノベーションの両立を目的とした情報循環システムを提案する.また,情報循環のしくみや制度の設計と情報循環を管理する方法論を“ソーシャルウェア(Socialware)”として提案する.最後に,専門分野を横断する社会·産学連携のネットワーク型“研究コンソーシアム”と,医療・健康分野の情報循環を例としたソーシャルウェア設計例を紹介する.

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© 2009 一般社団法人 電子情報通信学会
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