2011 年 67 巻 2 号 p. I_886-I_891
鹿児島県上甑島の浦内湾は,東シナ海に面するT字型に入りくんだ細長い湾で,毎年のようにあびき被害を受けてきた.漁船や水産施設をあびきによる損壊から守るためには,予知・避難という対策もあるが,沖合であびき発生の原因となる微気圧変動を検出したとしても,1~2時間で甑島現地にあびきが到達するため現実的とは言えない.湾内に防波堤を設置することで振動モードを変化させたり,渦形成によるエネルギー減衰により湾内の増幅を低減させることは,従来から行われてきた長周期波対策である.しかし浦内湾のように細長く2つに分岐する特異な地形の湾に対して,防波堤設置による副振動低減効果を調べた研究例は見当たらない.本研究は,副振動対策としての防波堤設置の効果を数値計算により調べたものである.