1986 年 28 巻 10 号 p. 2339-2347
悪性貧血の発症7年後に橋本病を合併し,内視鏡的コンゴーレッド法で,輪状変色帯を有する1例を経験した.症例は56歳の女性で,悪性貧血と診断され,Vit.B12の治療後7年目に甲状腺機能低下症を合併し,橋本病と診断した.同時期に施行した内視鏡検査で,胃体部粘膜萎縮がみられ,コンゴーレッド法で胃角対側大彎から小彎角上部にかけて輪状変色帯がみられた.本症は自己免疫機序の関与があるA型胃炎の進展様式を知る上で示唆に豊む症例と考えられた.さらに他疾患で,輪状変色帯がみられた症例について検討すると,それらは免疫機序の関与が考えられる疾患であった.