更新世末から完新世への移行期は,気候変動による環境の変化と人類の適応行動を考えるうえで,考古学にとっても重要な時期である.しかし,特に近年この時期の14Cの生の測定年代値と較正を施した後の年代の間の開きが,考古学・人類学にとって無視できない問題となって,対応をせまられている.われわれが今後直面するであろう諸問題を,この問題に関して一歩先んじて議論が展開している中部ヨーロッパの事例で検討し,いくつかの問題点を指摘した.特に,考古資料の細分編年と測定誤差,14C年代測定値と較正年代に関する表記上の問題,較正年代と暦年の関係など,今後検討がせまられると考えられる諸点について問題を提起した.