1989 年 18 巻 5 号 p. 653-658
13ヵ月,体重4076gのTGA型Taussig-Bing奇形に対し,右室内螺旋型tunnel patchを用い,左室血流を心室中隔欠損を通して大動脈に導くPatrick-McGoon法を施行し,良好な経過を得た.とくに本例では,配列異常性の大きな心室中隔欠損の一部を,まずflat patchで閉じ,それに続けて螺旋型tunnel patchを縫着する,two-patch法を行い,非常に有効であった.Jatene法も考慮したが,冠動脈移植時,左前下行枝が引っ張られる可能性の高い走行であったため危険と判断した.退院時echoで,左室流出路(右室内螺旋型tunnel)の狭窄も認めず,術後10ヵ月を経過し元気に外来通院中である.Patrick-McGoon法は,弁を含めた心血管系の解剖学的連続性が正常に保たれ,右室切開時以外は冠動脈走行に左右されず,成長も期待できるという利点があり,乳幼児期のTGA型Taussig-Bing奇形にはJatene法とともにまず考慮されるべき根治術式であると考える.