1991 年 20 巻 4 号 p. 651-655
74歳女性の胸腹大動脈瘤に対し,胸腹大動脈置換・内臓4動脈再建を行った.術中の大動脈操作に起因すると考えられる,内臓諸臓器および下肢の広範な微小コレステロール塞栓症を起こし,術後48時間で死亡した.76歳男性の,大動脈・腸骨動脈領域と大腿・膝窩動脈領域の複合性病変に対し,中枢病変の改善を目的に大動脈-両側大腿動脈Y型人工血管バイパス術を施行した,術直後から一側の下肢が蒼白で,再手術時の造影では閉塞部末梢の後脛骨動脈にin situ thrombosisが認められた.血管外科での重大な合併症のひとつは出血であるが,その対極の塞栓-血栓もまた注意すべき問題である.大動脈手術に合併する塞栓・血栓症の予防,対策に関して言及する.