1992 年 21 巻 1 号 p. 104-107
教室の腹部大動脈瘤手術160例中4例の急性血栓症を経験したので報告する. 症例は52歳から83歳の男性で大動脈瘤の横径は4例中3例が7cm以下であり, 他の1例も10cm以下と考えられた. 4例中3例に末梢の閉塞性疾患の合併がみられ, 他の1例も右下肢のしびれ感や冷感の既往があった. 4症例ともに他疾患にて通院・加療中であり, 主治医は腹部大動脈瘤の存在を認識ずみと考えられた. 初発症状はいずれも臍下部の虚血症状である. 4例中1例のみ救命したが発症から手術までの時間が3時間と早い症例であった. 早期に血行を再建したにもかかわらずMNMSに陥り, 容量負荷と血漿交換療法にてことなきを得たものの, 本症の治療にはMNMSの病態の把握と対策が重要と考えられた. また4例中1例は血栓性閉塞化した腹部大動脈瘤の破裂である. 破裂のみでなく血栓症の観点からも腹部大動脈瘤は発見されたなら直ちに手術すべきと考えられた.