1992 年 21 巻 3 号 p. 283-286
症例は44歳, 女性で主訴は背部痛と前胸部痛である. 6歳のときリウマチ熱に罹患し, 19歳のときに軽度の大動脈弁閉鎖不全を伴う僧帽弁狭窄症の診断のもと直視下僧帽弁交連切開術を受けた. さらに, 40歳時には心不全症状が出現したため, 当科に入院し, 大動脈弁, 僧帽弁二弁置換術 (Medtronic Hall 弁27M, 21A) を施行された. その後経過良好であったが4年後の平成3年2月, 背部痛と前胸部痛にて緊急入院し, 冠状動脈造影中大動脈弁位の Medtronic Hall 弁が開放位で stuck valve の状態にあることがわかり, 再弁置換術を行い救命した. 原因は大動脈弁位代用弁が流入側の pannus formation により開閉が障害されたためと考えられた. 遠隔期の大動脈弁位使用の代用弁の開放位 stuck valve は希なので報告した.