1992 年 21 巻 5 号 p. 515-518
3例の胸部下行大動脈手術に対しわれわれが開発した全回路抗血栓性のヘパリンコーティングチューブをローラポンプで駆動し補助手段として用いた. 方法は動脈間バイパスとし, ヘパリンは少量のみの使用かもしくは投与しなかった. 大動脈の遮断時間は52~64分であった. 右腋窩動脈を脱血部とした1例では補助流量が十分ではなかったが大動脈を脱血部位とした他の2例では流量, 下肢動脈圧とも満足すべき結果が得られた. バイパス後の回路内には血栓形成はなく血栓塞栓症の所見も認められなかった. 本法は抗血栓性および腎機能保護上の点から胸部下行大動脈手術の際の有用な補助手段と考えられた.